2025-07-27#短編小説

通り道 5

伯母と母は一歳違いの姉妹だ。どちらが年上か当てるのは、昔の写真を見ても難しい。二人の育った家の様子は、家業を営む祖父─二人にとっての父─に左右された。

祖父は昔気質の人だった。良くも悪くも豪快だった。景気のいいときは羽振り良く金を使い、苦しいときは歯を食いしばって乗りきった。売るものは時代によって変わった。下着や菓子に始まり、プラスチック製品、計算機やワードプロセッサーを扱うときもあった。

新しいものが入るたび、祖父はそれを誰よりも先に使った。自社の名前で製品を売り出すこともあった。

祖父のまわりには、いつも”流れ”があった。家には人の出入りが絶えなかった。門戸はいつも開いていた。祖父を中心に、ものごとが一体となって動いていた。

しかし、商いは波に揺られた。商売が傾くとまわりの顔色は変わった。年齢が増し病気が襲うと、その語気は弱まった。人の往来は少しずつ失われていった。

引退した後の祖父は、静かな書斎で過ごすことが多くなった。夜更けまで灯りを点けて何かを書いていた。そのことについて、誰も詳しくは知らなかった。



夏木 絃

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